ぶどう山椒

プロが語るぶどう山椒の魅力

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古本薫氏

ぶどう山椒との出会いで完成した
お客を”とりこ”にする看板メニュー

山椒なべ とり粋
古本 薫

取材日:2019.12.9

Kaoru Furumoto

「ほんまもんの山椒を」

「山椒の魅力はどこですか?」と尋ねると、とり粋のご主人古本さんからは間髪入れずに「香りがぱーっと口の中に広がって、しびれがあとに引く。そしてその刺激が忘れられない。そこにありますねぇ」と満面の笑顔で答えが返ってきた。京都の人は本当に山椒が好きだ。春夏秋冬、京料理には山椒が欠かせない。「親子丼でも強制的に山椒が入ってますよねぇ」と古本さん。

ところが、市販されている山椒の中には、色も香りもなく、インパクトもない。山椒らしさを失っているものがある。「あれは山椒とは言わないでしょ。山椒ってこんなもんかと思われるのは悔しい。ほんまもんの山椒を知って欲しい」。そんな古本さんが作り出したメニューに「京山椒なべ」がある。鶏ガラを使って丁寧にひき、すり潰した山椒の実を合わせた特製のスープに、若鶏、ひね鶏、そしてたっぷりの野菜を入れていただく。滋味深く、記憶に残る味わいだ。鶏、山椒、野菜から出た美味なるスープに、最後はラーメンや山椒入り餅などを入れて味わい尽くす。体も心も温まる、お客を虜(とりこ)にするリピーター続出の看板メニューになっている。

ぶどう山椒との出会いで完成した
京山椒なべ

「これピッタリやん」。これはぶどう山椒と出会った時の古本さんの印象。当時、新たな店舗である三条店の顔となる「京山椒なべ」に使う山椒を探していた。イメージしていたのは、かつて京北(けいほく)にあった郷土料理の店で提供されていた知る人ぞ知る山椒鍋。特別な鳥に山椒を合わせたおいしい鍋だった。「あの美味しい鍋を、町中で、すぐに気軽に食べてもらえるようにしたい」。味を思い出しながら試行錯誤を重ね、スープと相性の良い山椒を探して、国内にあるいくつかのメーカーのものを試していた時に、偶然店を訪れた有田川町の人に紹介されたのがぶどう山椒だった。しっくりきた。「これピッタリやん」。こうしてようやく納得できるオリジナルの「京山椒なべ」が完成した。

古本さんは「山椒に感動したことがない人、食わず嫌いの人にこそ食べて欲しい」と言う。まずは薄めの山椒から。苦手意識を持っていた人も、食べすすめるうちに、気づけば銘々に味を調節できるように用意されている”追い山椒”をかけていると言う。

看板メニューの「京山椒なべ」。ひね鳥ならではのスープの旨味とぶどう山椒の刺激で心まで温まる

料理人への道

古本さんが料理人を目指すきっかけになったのは、中学時代にみた「前略おふくろ様」、料亭を舞台にしたドラマだ。「料理人になりたい」と憧れた。「あの料理屋はどこや。そこに就職したい」。調べてみると、料理指導をしたのが南禅寺にある400年の歴史を誇る名料亭「瓢亭」だったということがわかった。料理学校で勉強し、努力を重ねて入社を果たす。そこではお茶やお花を学び、最高の食材と最高の器を使う経験をさせてもらったと言う。体調を崩して料理学校へ戻ったあと、出石そばの店に入って20年間そば打ちをした時期もある。

その後、京都に戻って、同級生など地元の人たちの繋がりの中で助けられながら、甥と一緒に始めたのが焼き鳥の店「とり粋本店」。店は評判となり、「やってみないか」と紹介されたのが、京都の中心地にある現在の三条店だ。築80年ほどの風情のある店舗は、いつも満席。「1回来たら誰かに紹介したいと思うてくれはる。お客様自ら“こんなん食べたことある?”と自慢してくれはるんです」と古本さんは嬉しそうに話す。ほとんどのお客はリピーターとなり、予約が取りづらい店になっている。


「もも肉の青鬼焼き~山賊焼き~」

いつもあるとは限らない「あるときないとき とりもつ煮」

ぶどう山椒を使った人気メニュー

看板メニューとなった「山椒なべ」は、地鶏の鶏がらスープに山椒の風味が溶け込んでいて、粒の状態の実山椒よりも馴染みやすく海外の人にも人気だそうだ。スパイスに慣れているフランス人は、山椒の実を口にしてお酒を呑む”通”もいると言う。お客の年齢層は幅広く、男女比は4対6で女性の方がやや多い。「お腹の調子が良くなる」「デトックス効果がありそう」という女性ファンもいるという。

ぶどう山椒を使ったメニューは他にも。鶏の皮に山椒をつけて、時間をかけてパリっと焼いた「青鬼焼き」。「他所はほどほどにしかパリパリとちゃう。僕のパリパリはもっとパリパリ」と笑いながら話す様子は自信いっぱいだ。確かにぶどう山椒の爽やかなしびれ感と鶏の皮のパリパリ感が良いハーモニーを作っている。さらに、低温でじっくりと煮た「とりもつ煮」の臭みのない柔らかさは絶品。いずれも予約の時点でオーダーが入る人気メニューだ。

ぶどう山椒の魅力をさらに広げたいと、店内には、地元の縁を活かして作ってもらったちりめん山椒やケーキなどが手土産用に置かれている。気さくで飾らない「あははは」という笑い声が印象的な古本さんは、ぶどう山椒の見事な使い手だ。

山椒なべ とり粋

〒604-8241 京都市中京区三条通新町西入ル釜座町36
TEL.075-255-5191

営業時間:[月〜金]
11:30~14:00 18:00~23:00
[土・日・祝]
18:00~23:00
定休日 :不定休

◎予約をお勧めします。

https://sanshonabe.com/

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