ぶどう山椒

ぶどう山椒 ひろがる用途

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ぶどう山椒のお酒

ぶどう山椒がさわやかに香るクラフトビール

有限会社アオキヤブルーウッドブリュワリー
代表
児 島 章

取材日:2019.12.10


「他府県の方には特に有田山椒エールや有田みかんエールが人気ですね」と語る児島さん

食中酒にも向く「有田山椒エール」

「山椒を使ったビールは、いろいろな料理とも相性が良くて、食中酒にも向いているんです」と教えてくれるのはブルーウッドブリュワリー代表の児島章さん。和歌山県、中でも地元有田川町産の特産品にこだわってクラフトビールを製造している。「ぶどう山椒を使ったビールは、さわやかな香りと味わいで、油脂分が多いような料理でも口の中を洗い流すようにすっきりさせてくれるんです」。

「有田山椒エール」は、地元有田川町で採れたぶどう山椒の実をすり鉢でていねいにすりつぶし、ホップと合わせてボイル。一旦取り出した後に、半分は再びビールと一緒にタンクに漬け込んで造られている。飲むと、ぶどう山椒の香りが喉の奥から鼻に柔らかに抜ける。山椒独特の刺激が抑えられていて、最後に感じられるさわやかな香りが食事を楽しくしてくれる。イベントなどでも人気だそうだ。

コンセプトは地元のものを使うこと

和歌山は温暖な気候が特徴だが、多くの山や川があり一日の寒暖差が大きいなどの環境のバリエーションも豊か。そのため多様な農産物に恵まれている。児島さんが造るクラフトビール も、「有田みかんエール」や「いちごエール」「すももヴァイツェン」、有田中央高等学校で栽培されているマンゴーを使用した「マンゴーヘイジー」など、有田川町で採れるものを中心に和歌山県産の旬のものを使って、これまで14〜15種類ほどが誕生した。

素材探しは地元のつながりが心強い。「こんなものあるけど使う?」と新たな素材と出会ったり、「こんなものを作りたいけど、どうしたら良いかなぁ?」と相談したりするという。そんな中で誕生したものの一つに「備長炭スタウト」がある。児島さんが黒いスタウトビールを造りたいと考えていた時に「食用の炭があるよ」と知り合いがアドバイスをくれた。こうして煎って香ばしさを出した麦芽に、和歌山特産の紀州備長炭を組み合わせたクラフトビールが出来上がった。


「有田山椒エール」すりつぶしたぶどう山椒はホップと共にボイルして香りを出す

それぞれの特産品を手に持つシンボルツリーのアオキがユーモラスに描かれている印象的なラベル

パズルのような組み立てが楽しい

酒税法の改正により、日本でもマイクロブリュワリーと呼ばれる小規模のビール醸造所が増えた。「小規模醸造所の良いところは?」と尋ねると「フットワークの軽さですね」と答えが返ってきた。1回の製造量は200リットルほど。麦芽の比率やホップの種類、酵母などを微妙に変えて常に試行錯誤しているという。

「農産物のそれぞれの個性に合わせてスタイルを決めたり、山椒やいちごといった副原料を際立たせたり、控えめにしたりを考えるんです。組み立てるのがパズルみたいで楽しいですね」と笑う。評判が良かったものの一つに「早摘みかんサワー」がある。色づく前の青いみかんの果汁を使ったものだ。少し酸味のあるサワーエールは、通常は乳酸菌を使う。「青みかんの果汁はすごく酸っぱいので、この酸味をビールに活かそう」と造ったものだ。

「ホップは新しい品種が出ると、香りや苦味を試したいなぁと思うんです」と素材の掛け合わせを楽しみながら追求している様子が伝わってくる。「今後は日本産のフレッシュホップも使ってみたい」と探究心が止まらない。


タンクの中で発酵に約1週間、さらに2〜3週間熟成させて樽詰めされる

樽を瓶詰め機にセットして、1本1本ビールが充填される

「常に試行錯誤。常にゴールは先に」と語る児島さん。奥に見えるのは醸造所

ブリュワリーの開業

児島さんは、他の仕事をしながら家業を手伝っていたが、次第にお客がつくなど商売の面白さを感じて継ぐ決心をした。「今後の展望を考える中で何か新しいことをしたい」という想いが、ビール造りにつながったという。「昔から家族操業で代々続いている地元の造り酒屋さんをみていて良いなぁと思っていたんです。ぼくもそんなことができれば良いなぁと思って」と、みんなに親しまれているビール造りをする決心をした。仕事の合間をぬって岡山でビール造りを学んだ。

「いちばん大変だったことは?」と尋ねると「製造免許証取得が何より大変でした」という。クラフトビールを知ってもらうために酒店の隣にビアパブも併設した。店内からは奥にある醸造所をガラス越しに見ることができる。

ビールに使われている素材を手にしたチャーミングなラベルは、敷地にあるシンボルツリーであるアオキの木をモチーフにして描いてもらったもの。実物は圧倒的な存在感がある大木。児島さんの祖父が気に入って、植えてもらったものだそう。ブルーウッドブリュワリーのクラフトビール は、地元の特産品と地元のつながりによって紡がれている。

Information
ブルーウッドブリュワリー

新しくなったブルーウッドブリュワリーさんのサイト。地元和歌山の素材の魅力が伝わってきます。
オンラインショップへもリンクしています。

https://www.bluewood.beer/

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